トップダウンとボトムアップ

生産管理の課題

トップダウン

毎日、夜遅くまで残業し、工場内を走り回っている生産管理を「頑張っている」と評価していた文系トップから、アジア帰りで現場主義の理系トップに交代すると、評価は180度変わった

最初に、生産管理部に自らを改革する様な動機づけをし、しばらくして、外部から改革を支援するためのプロジェクトチームを作った。

チームは、材料設計の技術者1名と、研究所からの転属者1名の2名を専任とし、情報システム本部との窓口をしていた管理部の工場駐在2名を兼務とした4名のメンバーで、リーダーは、工場長直轄のQCサークルのリーダーが兼務した。

プロジェクトチーム発足後の目標設定の協議の際、下記の3つの柱からなる生産管理情報システム構築を提案した。

Noテーマ概要難易度費用開発期間
製造仕様システム化設計情報データベース構築短期
予定組みシステム化生産計画作成の省力化長期
実績・数量管理システム化リアルタイム進捗把握長期

これに対し、理系トップは「③は、現状の悪い状態を把握するために金をかける意味はない!」と一蹴。さらに①②なら、②が優先だろう・・との判断であった。

ボトムアップ

ちなみにこの時、「生産管理」を仕事として取り組むにあたり、自己啓発で大型の本屋を歩き回ったが、ごく一般的な解説書くらいしか無く、実際に仕事の参考になるような内容のものが見当たらなかった。(このブログを始める動機

少し長くなるが、初期ステップの概要を記す。

まずは現場を知る事から‥と、生産管理の担当者を見ると・・
 1) お昼:現場に入り浸り
 2) 夕方:勘定系のホスト端末で材料手配
 3) 深夜まで・・予定組み (11PMから呑みに行く事も日常)

1)現場では、色々な原因で予定通りに生産出来ない事があり、予定差替えや、それに伴う材料入荷の繰上げ手配などで現場〜購買〜荷受け場などを走り回る。

夜の予定組みに掛かる時間は、わずかで、大部分は、様々な進行トラブル対応と、営業との納期折衝に費やしていた。

ホワイトボードに注番/品目を手書きした磁気ラベルを貼って縮小コピーし、予定表にするが、転記ミスでトラブルこともあった。

この手書きを印字にするだけでは、効果はわずかだが、まずは第一歩と受注データの提供を情報システム本部に相談

しかし壁は高く、諦めかけた頃、管理部の人が聞きつけ「本社組織が工場合理化の障害になっている」と援護。トップが動いて実現した。

そして、生産管理部内に設置したパソコン(後にUNIX機にアップ)のデータベースに1日遅れでデータを格納し、ラベル発行のために、検索手法(SQLと4GL)を習得した事で、データベースの力=ITの潜在力を思い知ることになる。

ここから、生産管理と連携した継続的改善+アイデアの積み重ね(『アジャイル開発』)をスタートした。勘定系データにはないが、生産管理に必要な付加情報(データ)の追加含め、改善のステップに応じて生産管理に必要な機能を継続して開発した。

開発内容は15項目あるが、1つひとつが重要なステップで、全体像と密接につながる。

アジャイル開発

勘定系のデータには無いが、生産管理に必要な情報を付加した情報提供のためのデータベース(以下、DB)を使って、生産管理で日々発生する問題の解決に取り組んだ。

一方、勘定系にない情報の最大の課題は、生産計画の情報デジタル化であり、短期の業務改善と並行して、中長期的な視野で、予定組みのシステム化を進めた。

当初、納期対応の混乱を乗り切るため、納期順に積み上げて、負荷状況を判断するための「山積み表」や「納期回答案」を作成し、生産キャパに合わせて山崩しの道具としたが、その後、システム機能と運用が充実する事で、必要性が無くなった。

最終的に残った主な機能は、以下のとおりだが、1つひとつが重要な要素と考える。

① 営業の納入管理と連携し、市場動向に合わせて更新する納期情報をデータ追加
② 納期の確定度合い「受注段階・ほぼ確定・出荷便確定」3段階の区分データ追加
③ 受注データから予定組み対象を抽出し、工程順序を管理するアルゴリズム
④ ③で受注データの変更に追従するための 品目単位のサブ表を表追加
⑤ 新たに入った受注の各工程の予定日を自動で割り付けるアルゴリズム
⑥ 生産機の振分け指示を④サブ表と明細データ追加
⑦ 勘定系にない情報をバッチ処理の際に④サブ表に追加登録する仕組み
⑧ 納期から逆算した「工程毎の進行限度日」を明細データ追加
⑨ 仕事の所要時間読み(=工数計算)の精度アップ
⑩ グループ進行の元になる金型管理番号を明細データ追加
Ⅺ 切替え段取り軽減のための金型寸法を明細データ追加
Ⅻ これらを総合的にみて最適な予定を容易に組むことを支援する操作画面
XⅢ 前後工程の情報含め突発事の現場判断を支援する「日々管理予定表」
XⅣ 現場作成の治工具の準備を支援する「長期予定表」
XⅤ 計画全体を把握し、機械毎の最適な勤務シフトの判断を支援する鳥瞰マップ
XⅥ 営業部課/顧客別に品目一覧表からオーダ一覧で仕掛り在庫を確認する進行管理表

結果

生産に関する『過去の実績』と『当面の計画』の全ての主要データをデータベースで一元管理、生産管理による、生産管理のための即戦力支援に活用することで、次々に効果を出しながら、最後に、本当に必要な仕組みが残る。そのシステムこそが「生産管理DX」である。

これにより「必要な時に、必要な人に、必要な形」で情報を提供し必要な支持を発信する。

なお、運用後の定常業務や、それ以降のシステム改善については、改めてその道のプロである情報システム本部の力を借りる選択をした。

ただシステム開発の段階は、次々に現れる難敵ドラゴンを 各々に適した武器に持ち替えて、次々に倒して行く様な感じである。とにかく進んで行った結果、景色が変わって来た。

生産計画が安定する事のメリット

① 計画のミスが無くなる事で、生産阻害が減る
② 計画の営業共有により、納期情報の精度が上がり生産阻害が激減する。
③ 計画変更が減る事で、現場の準備ロスが激減する。
④ 納入がスムーズに出来る事で、顧客の現場から信頼を得る。
⑤       同      、営業が本来の仕事に専念出来る。
⑥       同      、営業内勤者のストレスと残業が減る
トラブル時のリカバリーが的確に出来る事で、2次災害を防止
⑧ 計画情報の現場共有により、現場判断の質が向上し2次災害を防止

Ⅹ 現場の準備作業が減る事で、生産効率が向上
Ⅺ       同     、作業者の疲労が軽減し、定着率が向上。
Ⅻ 生産計画が素早く出来ることで、生産管理のストレスと残業が減る
XⅢ 生産計画作成に熟練が不要になる事で、生産管理の若年化が進む。
XⅣ 工程や機械毎の仕事量が見える事で、早期のシフト対応が出来る。
XⅤ 計画通り生産出来る事で、歩留りが向上
XⅥ       同    、品質事故が低減
XⅦ       同    、現場改善活動の成果がはっきり出る

これはポートフォリオ上で、負け犬(低市場成長x低市場占有率)に位置し、さらに『多品種/短納期/小ロット化が進む極めて厳しい市場環境の中でも、 ITの力を利用して上手くシステム化を行えば、生産性を劇的に高める事で、利益を確保できる事を示すものである。

実際、工場の事務所は人が減って若年層が増え、過去の喧騒の不夜城が嘘のように夜は静かになった。

一方で、万年Cクラスの会社が、誰も予想もしなかった Aクラス入りを果たし、他社から見学者が訪れる様になった。

トップダウンによるプロジェクト発足から始まり、紆余曲折を経ながらも、比較的少ない投資で、生産管理部門とプロジェクトチームの協働・ボトムアップの結果、DXに至る経緯である。

関連したシステム拡張

実は、上記以後も機能拡張を行い、品質向上や生産準備の物流省力化を進めた。
概要を下記する。

◾️製品仕様のシステム化と、日々管理予定表への『版』表示による生産直前での最新版管理
  ➡︎ 受注後に仕様変更が発生した場合「日々管理予定表」に、その旨と「最新版の数値」を
    印字する事で、作業指示書の妥当性を確認して生産着手する。

◾️金型保管番地管理システムと連携し、日々管理発行の際に「金型出庫リスト」を発行
  ➡︎ 1日分の搬出予定が見えるので、移動ロスの少ない効率的な物流を考えて仕事ができる。

◾️品質保証内のパソコンで独自に登録・発行されていた「品質事故・クレーム情報」を取り込み。
 営業内勤者が、納入管理の際にワンクリックで参照。1つ前のオーダーが全数良品見込みである
 かを確認できる。
  ➡︎ 前注番で不足数が出る場合、次のオーダーから補充が必要になり、納期が急に繰り上が
    る。早い段階で、気付くことで、生産管理と連携して、最適なリカバリー策を講じる。

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